アナログ研究: 心理学の基礎
アナログ研究とは、抑うつや不安といった臨床テーマについて、大学生や動物といった非臨床群を対象に、質問紙調査や実験を行う研究法である。
目的
アナログ研究の目的は、臨床群で直接扱うことが困難な心理的問題の特徴を明らかにするために、非臨床群を対象に、臨床実践に役立つ知見を得ることをである。また、非臨床群でみられる軽度な心理的不調であっても、決して看過してよいものではなく、非臨床群を扱うことそれ自体にも意義があるといえる。
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用途
用途としては、アセスメント法の開発、心理的問題の発生・維持のメカニズムの把握、心理的問題の発生や再発の予防的介入への示唆を得ること、などが挙げられる。
代表的な研究に、動物や大学生を対象に抑うつの発生・維持のメカニズムを明らかにした、学習性無力感に関する一連の研究がある。
利点
臨床心理学研究の主流である事例研究にはない、アナログ研究の利点として、以下の3点が挙げられる。
@まず、多数の対象者からデータを集め、高度な統計分析が可能であるため、迅速かつ確実に実証的な研究成果が期待できる。
Aまた、臨床場面では倫理的・実際的問題から容易ではない条件統制が、アナログ研究では比較的行いやすい。
Bさらに、非臨床群を扱うことにより、日常的に経験される心理的問題の特徴を明確化することも可能である。
留意点
一方、アナログ研究の留意点としては、以下の3点が挙げられる。
@まず、非臨床群でみられる心理的問題は軽度であり、時間的に安定しているとは限らないため、臨床レベルでの解釈に適用する際は注意する必要がある。
Aまた、特定の調べたい心理的問題のアナログ研究であるためには、他の心理的問題との弁別を明確にしておく必要がある。
Bさらに、用いる尺度によって重視する側面が異なるため、各尺度の特徴を十分把握した上で、尺度を選定しなければならない。
今後
アナログ研究においては、得られた知見を実際の臨床場面にどの程度適用できるのかといった問題が残される。しかし、心理的問題の経験が非臨床群においても珍しいことではないことを考慮すれば、心理的問題に関して予防的示唆が得られるアナログ研究は、今後重視されていく必要があるといえる。
以上のように、アナログ研究の概要について述べることができる。
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